2019.5.29 遺言のおさらい(自筆証書遺言の押印)-その9
2019.5.29 | カテゴリ:相続応援日記, 相続関連情報
自筆証書遺言には、民法968条1項に、遺言者の署名・押印を要件とすることが規定されています。
今回は、署名・押印を遺言書の同一個所になすべきかを判断した、平成の判例についてお話したいと思います。
本件で問題となった遺言書は、遺言内容が書かれた書面に押印がなかったものの、この書面を入れた封筒の封じ目には、押印がなされていました。
本件の高裁判決は、自筆証書遺言に押印が要求される趣旨の一つに、遺言書が完結したものであることを明らかにする点が挙げられるとした上で、「右趣旨が損なわれない限り、押印の位置は必ずしも署名の名下であることを要しない」として、適式な押印であると判断しました。
署名・押印が同一個所になされていなくとも、封筒の封じ目に押印があれば適式な押印であると判断したこの高裁判決は、最高裁でも是認されました。
もっとも、遺言書に署名・押印がなく、これを入れた封筒に署名・押印があったものの、検認時には封筒が既に開封されていたという事案について、高裁において「本件文書と本件封筒が一体のものとして作成されたと認めることができない以上」、適式な署名・押印がないものとして無効との判断が下されました。
このため、署名・押印の個所だけでなく、遺言書と封筒の一体性も重要な意味を持つものといえます。
記:資産家を応援する相続の専門家:税理士法人レガシィ 八杉 努 4093
(幸せなキャッシュフロープロジェクト)(もめない・もめさせない遺産相続プロジェクト)