2019.5.10 遺言のおさらい(自筆証書遺言の押印)-その5
2019.5.10 | カテゴリ:相続応援日記, 相続関連情報
自筆証書遺言については、民法968条1項に遺言者の押印を必要とすることが規定されています。
今回は、この押印が指印・拇印であっても遺言が有効と扱われるかについて、お話したいと思います。
拇印による遺言の有効性については、下級審の間で判断が分かれておりましたが、平成元年に、有効であるとする最高裁の判断が下されました。
「いわゆる実印による押印が要件とされていない文書については、通常、文書作成者の指印があれば印章による押印があるのと同等の意義を認めている我が国の慣行ないし法意識に照らすと、文書の完成を担保する機能においても欠けるところがない」として、有効な遺言として判断したのです。
なお、指印・拇印を用いた遺言を無効とする見解の根拠は、印鑑と異なり、指紋については公的機関が登録する制度がない以上、遺言者の死亡後は、指印・拇印が遺言者のものであるか確認できないという点にありました。
しかし、上記の問題は、認印を紛失して遺言者の印影か確認できない場合にも同様に生じるものといえます。
印鑑には、印鑑登録という制度があるにも拘らず、認印が押印された遺言書も有効と扱われていることからすれば、指印・拇印に限って遺言書を無効とする必要性はなく、有効であるとした最高裁の判断は妥当であると考えられます。
記:資産家を応援する相続の専門家:税理士法人レガシィ 八杉 努 4080
(幸せなキャッシュフロープロジェクト)(もめない・もめさせない遺産相続プロジェクト)